五十九部「ふつうにねむい」

家ではハウスを欲す。
sanaka/佐藤好縈 2024.08.15
誰でも

京都、滞在八日目。毎日全力の虫や鳥の声を聞きながら、エアコンの無い日々を送っていたわたしにとって、都市部のホテル暮らしがかなり身体にきている。ずっと同じ温度で在ることがこわいなんて思いもしなかった。疲れているのに寝れない、過去に経験がない。

自宅で高木正勝を聴く必要はなかったが、都市部には高木正勝が必要だ。都、不安定な仕組みがなくて、都をぶっ壊さなきゃって思うと共に身体がぶっ壊れている。やべえ。

ある夜、ホテルの向かいのラーメン屋にふらっと入って席に着くやいなや水をひと口。メニューを渡されて驚きの一杯3500円のラーメン。そそくさと退却。ぶっ壊れてやがる。

ある夜、散歩してルーレット付きの自販機で炭酸水を買ったら出てこず、ルーレットが当たったのに出てこず、翌日業者に電話してみたら「お盆休みの為、十九日以降の対応となります」とのアナウンス、そのときはもう京都にはいない。ぶっ壊れてやがる。あと四日、身体が都に慣れる前に家に帰って深い眠りにつきたい。田舎はいいぞ。本当の自由があるぞ。都は、ゲーム内の自由があるぞ。そのゲームソフトの権利をもった人しか本当の自由がないぞ。いや、そいつも本当に自由かは怪しい。

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