四十九部「大きい顔」
渦になってきえろ
sanaka/佐藤好縈
2024.05.18
誰でも
おい。そこの大きい顔したおまえ。おまえだよおまえ。みんなによくしてもらってきたくせに感謝もせず、なんならありがた迷惑だなんて面して、歯医者にびびってる学生だった頃のわたし。まだいたのか。とっとときえろ。おまえがつくってきた借りに対する恩返しが山ほどあんだ。
おまえの言い分はわかるが、二十歳を越えたら家族や他人のせいにできねえからなって言っただろう?たとえば台風はな、冷たい空気の下に潜り込むように暖かい風が入り込んで、どんどん大きな渦になるんだ。いつまで暗い顔して漂ってる。ひとからもらった温かさを逃げずに受けて渦になってきえろ。
配慮と責任と尊重と知からなる現象が愛だってフロムの本で読んだだろ?どれも足りない空間で育ったからって威張るな。やる番だろ。何も考えず、やれ。お世話になった先生に挨拶に行くまでにきえろ。それか会ったと同時にきえろ。そして、おびえてるおまえを前にだせ。
無料で「sanakaの「そこはかとなき文學」」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。
すでに登録済みの方は こちら