六十五部「snap」
coffee5(佐伯市)での展示の途中、北風から南風に風向きが変わった。広い沼地を風が抜けて庭に流れ込んでくる風がやってくると、木々が芽吹き、花を咲かせ、この場所の春を味わう。わたしは、三十回以上も春を繰り返した筈なのに此処で春を初めて知った。身体と自然のピントが初めて合った。四角形で区切られた空間のcoffee5が季節を観測させてくれる為に、わたしの足を留める為に、coffeeが必要だったのかもしれない。春を知って、五度目の展示。
2026年の企ては、2つ。今年のテーマ「近くて遠い」を空間表現すること。それは、長崎市内で土と会話するように作陶する竹下梨沙さんがつくる、重そうで軽く重力を自由にした作品たちとsanakaの民族的な文様で多様な形をした衣服たちを同時に存在した空間を体験したかった。
もうひとつは、この地に合った選択肢を用意すること。これまでの在る着物から選んできたのに加えて、無地に近い布を仕入れて幅広い人たちの身体が入るように準備した。あたらしいズボンのシルエットも用意した。
sanakaは、この世に無いあたらしい形を提案し続けているから、社会やファッション的な常識の外にあって分かりづらい部分は認めつつ、それでも社会との接点を、人との接点を衣服を用いてコミュニケーションをとり続けてきた。
coffee5に集う人たちは、共同体のように「どっちが似合うかな?」「わたしはこっちだと思うけど、、」「○○さんはそっち指を指してるよ」「じゃ、これに決めた!」と民主主義的に決まったりして、此処の場所におけるsanakaの衣服はある種の記号になったりして、着て訪れた人たちによって愉しい風景をみさせてくれる。
この非言語の会話を可能にするのに、豪さんや鮎美さんたちと集う人たちの信頼関係が必要で、わたしたちの衣服とが折り重なって、ひとつの空間と時間がつくられるこの春を忘れられない。
その風景を残すのにスナップを始めることにした。
sanakaの服は形やコンセプトに特徴があって、基本的に一点もので、ブランド特有の匂いがしない。きものの文様といっても、諸外国の影響を受けたものも多く、色や柄は艶やかであったり、品性のある渋さであったり、すべて着合わせは本人次第だと考えている。着方を押し付けるつもりはなく、常にあなたに委ねている。あなたの正しいを磨いていって欲しい。わたしはそれを記録する。そうして、みんなで着方や合わせ方を育てていきたい。変なんてものがあったら、とっくにこの世は変なのだから。
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